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2017年9月17日日曜日

マレーシアの王様

 マレーシアの王様

 お隣の国マレーシアで、4/24に第 15 代国王の即位式典が開催されました。
 Sultan Muhammad V officially installed as Malaysian king http://www.straitstimes.com/asia/se-asia/sultan-muhammad-v-officially-installed-as-malaysian-king

 まずマレーシアに国王がいること自体にびっくりしますが、昨年亡くなったプミポン 国王のタイも記憶に新しく、ASEANには君主制の国が多いのではないか?と気に なります。

 ASEAN10 か国の内、君主制の国は、以下の4 か国です。
 タイ王国;立憲君主制
 マレーシア;立憲君主制(議会制民主主義)
 カンボジア王国;立憲君主制
 ブルネイ・ダルサラーム国;立憲君主制

 参考まで、他の6 か国は、以下のような政体となります。
 シンガポール共和国;立憲共和制
 ベトナム社会主義共和国;社会主義共和国
 インドネシア共和国;大統領制,共和制
 フィリピン共和国;立憲共和制
 ミャンマー連邦共和国;大統領制、共和制
 ラオス人民民主共和国;人民民主共和制
出典)外務省 webページ
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/asia.html

 世界中に国が約 200 カ国あるとして、その中に君主国は約 40 カ国らしいので、君 主率は約 20%です。ASEN の君主率は 40%(4/10)ですので、世界平均の倍と 高いことが分かります。

 話を戻してマレーシアの国王ですが、珍しいシステムで選ばれます。日本や、タイ のように代々続く同一家系による世襲制ではありません。
 マレーシアを構成する 13 の州のうち、スルタン(州の君主)が存在する 9 州のスル タンが、任期 5 年の輪番で、マレーシアの国王となります。
 また、国王は象徴的存在で、権力は首相(現在は、ナジブ首相)に集中しています。
 国家元首として国王は国軍最高司令官を兼任し、恩赦権限などを有するが、 裁量権ではなく、首相のアドバイスに従い行使する。
https://www.asiax.biz/news/43023/

 ちなみに、マレーシア新国王のムハンマド五世は、若干 47歳です。

 以上のことを考慮すると、よその国の人間が、マレーシアの国王の存在に気づかな いのも、仕方ない事なのかもしれません。

Grid 2.0

Grid 2.0 

 シンガポールで一番読まれている新聞「Straits Times」の一面に、「Power grid」 の文字がありました。電力の話題が一面に載ることは珍しく(日本でも珍しいかと思 いますが)、詳しく読んでみました。
↓がその記事〈7/22〉です。 

 Power grid revamp among projects for $19b R&D fund 
http://www.straitstimes.com/singapore/power-grid-revamp-among-projects-for-19b-rd-fund 

 Grid 2.0 power system への研究 
 Singapore's power distribution system could see its most ambitious overhaul a decade from now, following research on a new Grid 2.0 power system. 

 Grid 2.0 は、ガス発電、太陽光発電と熱エネを統合する単一ネットワーク 
 This new energy grid aims to consolidate gas, solar and thermal energy into a single intelligent network, with the end goal of more efficient, sustainable and resilient energy networks. 

 Grid 2.0 の含まれる分野に、$375 million(約300 億円)の投資 
 Some $375 million is being pumped into energy research under this Research, Innovation, Enterprise 2020 Plan (RIE2020), which Grid 2.0 falls under. 

 Grid 2.0 には太陽光を多く導入 
 the new energy grid would allow for greater use of clean energy, such as solar power. 

 Grid 2.0 には、クーラー等の機器効率改善も含まれる 
 "But Grid 2.0 doesn't just look at energy sources. We are also focusing on how to make buildings energy efficient, especially for air-conditioning, which consumes more than 50 per cent of building energy," he said. 

 Grid 2.0 の一環として、solid state transformers(半導体変圧器)のような最 新技術に投資予定 
 Singapore will look to invest in key component technologies, such as solid state transformers, whose cost could fall by 2025 when tests can be carried out in the field. 

 「Straits Times」には載っていない他社の面白い関連記事は、以下の通りです。 
 New grid system to manage energy use in S’pore 
http://www.todayonline.com/singapore/new-grid-system-manage-energy-use-spore 

 LNG の冷熱を利用 
 As part of Grid 2.0, researchers will, for instance, look at using “cold energy” — which comes from converting liquefied natural gas (LNG) to its gaseous form — to cool buildings, industry and vehicles. 

 冷熱を利用し空気から液体酸素と液体窒素を分離 
 there can be a system where the extreme cold can be used to produce liquid oxygen and liquid nitrogen from air. 

 液体酸素を利用し、発電効率上昇 
 Liquid oxygen, for example, can be used to burn natural gas in a special generator, where less natural gas is needed to produce the same amount of electricity. 
 RIE2020 Plan - Singapore government embarking on efforts to build nextgeneration intelligent Grid 2.0 
http://www.opengovasia.com/articles/7832-rie020-plan---singapore-government-embarking-onefforts-to-build-next-generation-intelligent-grid-20 

 solid-state transformer の特徴 
 solid-state transformer (SSTs are collections of high-powered semiconductor components, conventional high-frequency transformers and control circuitry which can provide a high level of flexible control to power distribution networks. When some communication capability is integrated, the entire package can referred to as a smart transformer. SST technology can step up or step down AC voltage levels like traditional transformers but they providing significant advantages in terms of flexibility and control which could be crucial for smart grids of the future and for integrating renewable energy into grids.) 

  Grid 2.0 の概要まとめると、次の通りとなりそうです。 

 Grid 2.0 は、ガス発電や太陽光発電、それとと熱エネを連結する概念的なネ ットワークのことで、 
 太陽光などの自然エネルギーを多く導入し、  クーラーなどの建物機器の効率改善を行い、 
 将来は、半導体変圧器を導入し、 
 更には、LNG 冷熱を利用し(空気から液体酸素を抽出)、発電効率向上、 
 これらにより、高効率の、持続可能な、ネットワークを実現する。 

 世界大戦は第一次と第二次ですが、他にも、第〇次、第〇世代と表現するものは 数多く存在します。最近の流行りでは、例えば、web3.0、携帯電話3G/4G、第4次 産業革命などです。 

 近い将来、この Grid 2.0 も、日常会話の中で一般的に使用される単語として定着 するのかも知れません。 

東南アジアのオリンピック

 東南アジアのオリンピック

 東南アジアのオリンピック大会と呼ばれる、SEA Games (South East Asian Games)が、8/19-30の間、マレーシアのクアラルンプールで開催されました。 https://www.kualalumpur2017.com.my/about.cshtml

 東南アジアで一番メダルが多いのは、人口の多いインドネシアか?、それとも中進 国入りしそうなタイ?開催国の地の利を活かしてマレーシア?、やっぱりお金持ち のシンガポール?  興味をそそられますが、ぐっと我慢して、まずSEA Gamesの概要です。

 開催
 二年に一度開催。2015 年はシンガポールで開催、2019 年はマニラ、 2021 年はハノイ、2023年はプノンペンで開催予定。
  参加国  ASEAN10 か国(タイ、ミャンマー、マレーシア、シンガポール、ラオス、ベ トナム、フィリピン、インドネシア、ブルネイ、カンボジア)と、東ティモール の計 11 か国。

 種目
 水泳
 AQUATIC DIVING、AQUATIC OPEN WATER、AQUATIC SWIMMING 、 AQUATIC SYNCHRONISED 、 AQUATIC
WATER POLO(水球)、

 水上競技
 SAILING、WATERSKI & WAKEBOARD

 体操
 GYMNASTICS-ARTISTIC、 GYMNASTICS-RHYTHMIC
 WUSHU(太極拳)

 陸上競技
 ATHLETICS、CYCLING、

 氷上競技
 ICE HOCKEY、ICE SKATING

 格闘技
 BOXING、FENCING、JUDO、KARATE、TAEKWONDO  MUAY(ムエタイ)、PENCAK SILAT(東南アジアの伝統的武術)、

 馬術
 EQU-ENDURANCE 、 EQU-DRESSAGE/JUMPING 、 EQUPOLO
 球技
 BADMINTON、BASKETBALL 、CRICKET、FOOTBALL、 FUTSAL、GOLF、HOCKEY-FIELD 、HOCKEY-INDOOR、 RUGBY-7S 、 SQUASH 、 TABLE TENNIS 、 TENNIS 、 VOLLEYBALL、NETBALL(バスケットボールに似た女性競技)
 LAWN BOWLS(イギリス発祥の球技)、PETANQUE(フランス発 祥の球技)、SEPAK TAKRAW(東南アジアの球技。足を使ったバ レーボールに似た競技)
 BILLIARDS & SNOOKER、BOWLING(TENPIN)

 射撃
 ARCHERY、SHOOTING
 その他
 TRIATHLON、WEIGHTLIFTING

 競技種目の特徴は、
 東南アジア特有の競技(PENCAK SILAT、MUAY、SEPAK TAKRAW 等) が反映されている。
 東南アジアに華僑が多いからか、中国由来の WUSHU(太極拳)が種目に入 っている。  植民地時代の名残からか、イギリス(LAWN BOWLS、CRICKET 等)やフラ ンス(PETANQUE 等)を始めとする、西欧で人気の高い競技(BILLIARDS & SNOOKER、BOWLING、SQUASH 等)が種目に入っている。
 ここで、植民地時代の宗主国はどこだったのか?が、気になります。

 SEA Games 参加国の20世紀初頭の植民地宗主国は以下の通りです。
 現在の国名 当時の国名 宗主国
1 タイ シャム王国 -
2 ベトナム フランス領インドシナ連邦 フランス
3 カンボジア フランス領インドシナ連邦 フランス
4 ラオス フランス領インドシナ連邦 フランス
5 ミャンマー イギリス領ビルマ イギリス
6 マレーシア イギリス領マラヤ サラワク王国 イギリス領北ボルネオ イギリス
7 シンガポール イギリス領マラヤ イギリス
8 ブルネイ サラワク王国 イギリス
9 フィリピン フィリピン スペイン→アメリカ
10 インドネシア オランダ領東インド オランダ
11 東ティモール ポルトガル領ティモール ポルトガル

 やっと本題に戻り、SEA Gamesの戦績です。
 メダル結果は以下の通りです。
 https://www.kualalumpur2017.com.my/seagames-country.cshtml
 第一位は、金メダル数でも、金銀銅メダル総数でも、ダントツのマレーシアでした。
 地元マレーシア人による自国選手への応援/声援は、やっぱり、効果絶大だっ たのかもしれません。

華麗なるリー一族の内紛

華麗なるリー一族の内紛

 政治批判は御法度のシンガポールで、一番権力を持つ首相を堂々と facebook で 批判するという驚きのニュースが今、世間を騒がせています。

 首相を批判しているのは、首相の実妹と実弟です。よくある兄弟喧嘩の延長かと思 いきや、そう生ぬるいものではありません。

 実弟曰く、「首相である兄のシェンロンに対する信頼を失った。常に監視されている と感じており、国家機関の行使という恐れを抱いている。シンガポールを離れるつも りだ。」と、命の危険すら匂わす、現在自分の置かれている状況を 6 ページにも及 ぶ文章に纏め上げ、facebookに公開していますので穏やかではありません。

  何がきっかけで、このような事態になったのか?の前に、このニュースに登場してく る(あるいは関連する)華麗なるリー一族をまとめてみます。

 リー・クアンユー氏
 初代シンガポール首相、建国の父。息子2人、娘1人の父。
 2015 年 3 月死去
 クワ・ゲオ・チュー氏
 リー・クアンユー氏の妻、リー・シェンロン氏の母。息子2人、娘1人の母。
 弁護士、2010年死去
 リー・シェンロン氏
 リー・クアンユー氏の長男、息子 3 人、娘1人の父
 現シンガポール首相
  ホー・チン氏
 現リー・シェンロン氏夫人。息子2人の産みの母
 政府系投資会社テマセク・ホールディングス元社長
 SP は、テマセク・ホールディングスの 100%子会社
 ウォン・ミング・ヤン氏
 医師、前リー・シェンロン氏夫人。息子1人、娘1人の産みの母
 1982 年死去(長男を出産 3 週間後に急死)
 リー・ホンイ氏
 リー・シェンロン氏の次男、産みの母は、ホー・チン氏
 MIT 卒、Google 勤務後、政府技術庁政府デジタルサービスデータ科学 部副ディレクター
 リー・シェンヤン氏
 リー・クアンユー氏の次男、リー・シェンロン首相実弟。息子3人の父。
 元シンガポール・テレコム総裁、現シンガポール民間航空局会長
 リー・スエットファーン氏
 リー・シェンヤン氏の妻。息子3人の母。
 弁護士  リー・シェンウー氏
 リー・シェンヤン氏の長男
 ハーバード大学研究員  リー・ウェイリン氏
 リー・クアンユー氏の長女、リー・シェンロン氏の実妹。独身。
 前国立脳神経科学院理事

 ことの発端は以下です。
 リー・クアンユー初代首相と家族が住んだオクスリー・ロードの住宅の扱いをめ ぐり、長男のリー・シェンロン首相が、政治的野心から取り壊しを望んでいた父 親の意志に反し保存しようとしており国家権力を乱用していると、妹のリー・ウ ェイリン氏と弟のリー・シェンヤン氏が共同で声明を発表した

 シェンヤン、ウェイリンの2人は、首相と首相の妻のホー・チン氏は政治的野心から住宅の保存を望んでいると主張。息子(リー・ホンイ氏)を首相にする意図 があるとしていた。 出典)AsiaX[弟と妹の主張にリー首相が反論、泥沼化の様相] https://www.asiax.biz/news/43572/

 Facebookでのバトル  シェンヤン氏の長男リー・シェンウー氏もフェイスブックに投稿。「シンガポール 政治へのコメントは回避してきたが、今回は例外だ。過去数年、私の家族は権 力の乱用が抑制されていないとの懸念を強めてきた。このため両親は移住と いう重大な決断に至った」と述べた。

 シェンヤン氏とウェイリン氏の声明に対し、休暇で海外滞在中のシェンロン首 相はフェイスブックへの投稿で反論。「家族内の事を公にしたことに落胆した。 妻と私が息子(リー・ホンイ氏)について政治的野心を抱いているとの主張はば かげている」と真っ向から否定した。さらに「2015 年 3 月の父親の死去以降、 長男として家族内の問題解決に最大限努力してきた。2 人の声明は父親の遺 産を損なった」と述べた。
出典)AsiaX[「首相には野心」、シンガポール脱出表明の首相実弟が爆弾声明] https://www.asiax.biz/news/43564/

 首相の息子ホンイ氏はフェイスブックへの投稿で「政治に関心はない」と表明 した。 出典)AsiaX[弟と妹の主張にリー首相が反論、泥沼化の様相] https://www.asiax.biz/news/43572/

 あるタクシー運転手の見解
 タクシーを利用した際に、一般のシンガポーリアンはこの件について、どう考え ているのか聞いてみました。その結果は、首相に対して厳しいモノでした。
 3 人の兄弟は、昔から仲がいいとは言えなかった。
 肉親すら制御できない人間が、一国を制御できるだろうか。
 “(リーシェンロン曰く)息子は、現在政治家には興味ない”と言っているが、 これは将来はわからない(=政治家になる)と言うことだ。

 兄vs弟妹のどちらの言い分が正しいのかは不明ですが、少なくとも次のことは言え るかもしれません。
 “言論の自由を厳しく制限した建国の父”は、皮肉にも“言論の自由を SNS で 謳歌する兄弟の父”でもあった。